ー帰還、整備ー
そして、気付けば俺は医務室に居た。
「む、起きたか。まったく、パイロットというのはどいつもこいつも頑丈だな」
少し離れたところから声がする。
「……頑丈じゃなきゃやってられないからな」
俺の反論には耳も貸さず、軍医は俺の身体検査を始めた。
「……俺は、どれくらい?」
「沈んでいた時間なら、帰艦してから4時間程度だな。…ん、特段異常なしだ。とっとと持ち場へ戻るといいぞ」
言うや否や、俺をベッドから追い出す。さっきまで寝てたやつに何しやがるのか。つーかホントに医者なのか? などと改めての疑問を抱きつつも、俺は医務室を後にする。そもそも腕はともかく、今一つの愛想の悪さで名高い奴だ。今更どうこう言う気はない。差し当たっては記憶が曖昧だが、生きている以上はあの戦闘を潜り抜けられたということだ。そう思い、格納庫へと向かう。
地球圏統一連合政府、治安維持宇宙軍第33航宙警邏艦隊『アカツキ』所属、第2
――4,5年ほど前から散発的に襲撃してくる謎の機動兵器が確認されている。そいつらは概ね
早い話が、お手上げだ。当初こそ互角以上に対応してこれたが、連中の機体性能も徐々に向上してきている。まだ決定的な差でこそないが、致命的な性能差になるのも時間の問題だろう。
ハンガーに収められた自分の機体を見上げる。奴らが現れる前からの採用機。
〈RMT-110E〉、オルドガーダー。取り立てて特徴もないが、欠点らしい欠点も特にない平凡な機体だ。主武装はライフルカノン1丁にシンプルな形状のシールドとその裏に懸架されたヒートブレード。それから機体固定で、信号弾やら煙幕を撃てるマルチディスチャージャー程度だ。
よく見なくても左腕が欠けているのが見える。ということは、あの時の俺はよっぽどの無茶をしたのだと理解した。これは機付長からたっぷり絞られそうだ。
「くぉらトガミぃっ!!」
案の定、機体の頭の方から機付長の怒鳴り声が響く。ちなみに〈トガミ〉というのは俺の名前だ。
「……なぁんスか、機付長。小言は後にしてくださいよー、医務室から出て来たばかりなんスから」
「こんなところほっつき歩いてる時点で元気だろうが!それより来い、聞きてぇことがある」
機付長は珍しく怒鳴るのを早めに切り上げ、俺を
フライトレコーダーに残ってたんだがな、と機付長が切り出す。
曰く、俺がカウンター気味に勝負をしかけた後の連中の行動が妙だったという。
「お前を機体ごと持ち去ろうとしてたんだよ。あぁ、艦長の方にゃ副長経由で報告済みだ。んで、その辺についてしっかり覚えてるかどうかってのを聞きたいわけだ。」
「つってもスねぇ……」
情けない話だが、カウンターを喰らわせてやろうとして失敗し、左腕を持っていかれた挙句気絶していたのだ。正直まったくもって覚えていない。いつの間にモニターされていたのか、画面越しに残念そうにする艦長の顔が見えた。ちなみにおっさんだ。というか、軍艦である以上ほぼほぼ男社会だ。
「オスカー4が君を回収した時にはすでに気絶していたというし、それなら仕方あるまいな。医務室を出たてにすまなかった中尉。今はゆっくり休んでくれ」
艦長はそれだけ告げると、返事を待たずに通信を切る。後には俺と機付長だけが残された。
「ま、なんだ。今は艦長の言うとおり休め」
「……うぃっス」
強面のくせにこういうところは気が回る。ともあれ、反抗する意味もないので俺は言われたとおり休むために格納庫を後にする。
「……そういや、飯食ってねぇ」
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