第八話 王様ゲーム
鍋を食べ終わった後、時刻は午後の三時を回っていた。
鍋の後片付けをした後、俺たちはリビングに集まり、毎年恒例のあるゲームを開始した。
「じゃ、王様ゲーム、始めちゃおー!」
「「「「おー!」」」」
一香の意気揚々としたその開始宣言に、俺を除いた四人が、楽しそうに続いた。
そう、王様ゲーム。合コンなどでは定番の、悪魔のようなゲームだ。例年なら俺も楽しんでやっていたのだが、今年はそうもいかない。
好きになった人がいるのだ。緊張するに決まっているだろう。
王様ゲームは経験上、盛り上がってくると、どんどんと命令が過激なものになって来る。学生という身で、しかも彼氏持ちがいる中だから、倫理的に際どい命令はもちろんないが。
でも、後ろから抱きしめるだとか、愛を叫び合うとかそんな命令はあるものだから、鍋の時よりもドキドキが止まらない。
それにしても、なんで双葉はこうも平然としていられるのだろうか。つい、本当は俺のことなんて好きなんじゃないんじゃないかと思ってしまう。
俺の緊張をよそに王様ゲームは始まった。しっかりと混ぜられた割り箸を一香、佐野、双葉、俺、端島、相坂の時計回りで順番に引いていった。
「王様だーれだ?」
「はい、私!」
トップバッターを切ったのは、無茶ぶりをさせてくることで定評のある、相坂だった。
「そうだなー…じゃあ、一番が一発ギャグ」
「は!? 俺!?」
相坂がそう言うと、端島が割り箸を握りしめながら、苦笑いでわなわなと震えた。どうやら、端島が一番だったらしい。
相坂がいい獲物を見つけたとばかりに、にやにやとしながら端島のわきを肘でつついた。
「ほらほら、早くしろよー」
「く…!」
しかし、端島はなかなか一発ギャグをしようとせず、あまりにも焦らすものだから、一香が割り箸を集めて次の準備をし始めるほど時間が経った。
そして、ついに。
「…マッチョマン」
端島はボディビルダーがするようなマッスルポーズをした。
「「「「「「…」」」」」」
場に沈黙が流れる。
「つ、次やろうぜ、な!」
空気に耐えきれなくなったのか、端島は顔を赤面しながら、そうまくしあげた。
いや、ご愁傷さまです…。急に一発ギャグやれって言われても、難しいもんね。それで、絞り出したギャグが受けなかった時の辛さって、すごいもんね。
俺は同情の目をうなだれている端島に向けつつ、次の札を引いた。
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