イイ感じの棒
悠戯
イイ感じの棒
ある日、十歳前くらいの少年達が公園で棒を拾った。
恐らくはどこかの木の枝が折れた物であろう。
彼らはソレをみて「イイ感じの棒」だと思った。
長さといい太さといい、振り回して遊ぶにはちょうど良い具合である。
彼らはその棒を振り回し、オリジナルの必殺技などを放ちながら楽しく遊んだ。
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それから数年が経った。
上の学校に上がった彼らは、かつて遊んでいた公園で再び棒を見つけた。
さすがにチャンバラ遊びをするような年ではないので振り回したりはしないが、それでも遊びで野球をする際にバットがわりに出来る程度には「イイ感じの棒」である。
安物のゴムボールとその棒で野球を楽しんだ後、ボールが他所様の家に飛んで行ってしまい、こっぴどく叱られた。
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更に十年ほどが経った。
かつての少年たちは青年になり、社会に出て働くようになった。
もはや、落ちている棒を見てもそれが「イイ感じ」だとは思わなくなった。
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そこから更に五十年ほどの時間が流れた。
かつての青年たちは中年をゆうに通り越して老年に入っていた。
腰も曲がり、足も弱っていてフラフラとよろけてしまう。
そんな彼らの一人が公園を散歩中に手頃な長さの棒を見つけた。
長さといい握り心地といい、杖にするのにちょうど良い具合である。
彼は「これはイイ感じの棒だ」と数十年前と同じような事を思った。
イイ感じの棒 悠戯 @yu-gi
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