9-誰か、助けてください
そんな様子に違和感を感じてくれた先生がいた。
教頭先生だった。教頭の授業が終わってから、
「なんかあるならいつでもこい」
とすれ違いざまに一言だけ残してくれた。
でも、そのときの僕は、誰に助けてもらうのも無理だし、あの時のことがあるからそんなことを言われても、じゃあ・・・というわけにもいかなかった。まだ高校生だから誰かに助けてほしい、誰かに頼りたい気持ちはあったけど、どうにもできなかった。そんなことしている間にも僕の腕には傷が増えていき、ひどくなる一方だった。一時は腕だけでは満足できなくなり、ボディカットやフェイスカットもしたことがあった。
そんなとき、ある人を思い出した。ご存知の方も多いと思うが「夜回り先生」の水谷修さんだ。この人なら僕のことを直接知っているわけでもないし、会うわけでもないから話すことができると思った。当時はまだそんなに多くの人が知っているわけではなかったから、公開されていた連絡先にメールをしてみた。そのやりとりののち電話をすることになった。そこで先生はすべてを聞いてから、
「誰かに話さなきゃだめだ。そこを離れて親元で協力してもらいながらの生活が必要だよ。誰か信用して話せる人はいる?それと、君が今でもそれだけ悩んでいるなら、刑事告発だって考えるべきだよ。実際報道されたことや関係者が周知していることとは、事実が異なるよね。ちゃんとそれも考えよう。誰か思いついた?」
と言われたので、教頭のことを話した。でも、過去のことがあるから心配だということも伝えた。水谷さんからのアドバイスは、
「一番最初に傷を見せるんだ。これだけ辛いことがあるって。先生見てって。」
というものだった。僕の中では、寮を離れて家に戻ることは、過去に屈したようで悔しかったから、耐えていたのもある。
でも、それももう限界だった。
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