第6話 新しい生き方 4

 そして彼は不動産屋を訪れ、店の主に自由な学校的居場所フリースクールの設立をしたい旨を伝え、物件で良い場所はないか尋ねてみる。

「今の学校に疑問を感じています。防犯上とかの理由があるとはいえ、あまりに閉鎖的に思いませんか?極端な言い方ですが、今の子ども達は学校に束縛されている気がします」

「たしかに昔と比べるとね。それと君が設立したいと言っている場所にどんな関係が?」

「あまりにも学校が息苦しくなっているということです。学校内でのイジメ等の問題も学校がもみ消すとかニュースとかで耳にしますよね。今の子どもたちには安心できる居場所が必要なんです」

「立派なお考えをお持ちだ。たしかお金はあるんでしたな。それならいっそのこと八雲台という場所にある物件を購買されるといい。法律的な手続き等あったら相談に乗りますよ。購買ではなく賃貸なら賃貸でまた話しますからな」

 思いのたけをすべて不動産屋の店のある主にぶつけた利道は店の主を感銘させ、協力関係を結んだ。

 それから利道は改めて仲の良い兄妹にも手助けを頼み、一緒に居場所を発展させることを約束する。


 次から次へと行動に移していく彼は自宅にフリースクール創始者を招待する約束をして来てもらうことにした。そして数日後に来てもらった利道は、フリースクール創始者に自分がこれから始めるフリースクール設立場所に案内し、そこでフリースクール運営にあたって重要な点を中心に話を聞いていく。



「ご足労いただきまして非常に恐縮です。私がまず重要だと思っていることは地域の方にもこの居場所を認められる空間=場所にしていくことだと考えています」

 彼はお茶を用意しつつ自分の考えを述べると、フリースクール創始者の古奥理事長から的確な返答がなされる。


「いろんな子どもたちがいるから心遣いとしては正解ですよ子どもたちと共に地域の人達の考え方を変えさせることも出来はするけど難しいですからね。まずはチラシの作成配布とパソコンホームページの設立をしてみたらどうかしら?」

「パソコンとか今はないですね。あった方が便利ですか?」

 彼の質問には古奥理事長から予想通りの返答をもらった。

「早く持った方がいいわね、最近はインターネット検索で調べている方達も多いから」


彼はフリースクールを熟知している創始者の助言に従い、お金もあるので一部をパソコンの購入費にした。だが利道はつい一~二年前の機種を専門店特価で購入してしまう。彼の昔からの貧乏性なタチは治らないようである。


フリースクール創始者からの話を肝に命じつつ、利道はフリースクール開設の準備をしようと思っていた。彼は想像よりも地域や家族の反発が少なかったことに肩すかしをさせられたかのような気持ちになったが、それだけ期待されているのだと思うことにして期待を裏切らないようにしようという思いがあふれた。

 そんなこんなで新しいフリースクールとして注目を浴びながらのスタートとなるのだった。

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