第5話 新しい生き方 3

「おれ、サッカーに詳しいつもりなんだけどなぁ…。そろそろ当たってほしい」

 主人公の彼は愚痴を言いつつ、あまり期待もせずに趣味で購入している『サッカーくじの券を確認する。これが利道の人生における転機となった。数少ない高額当選者になっていたのである。

(え? 本当に……。夢じゃないよな……)

 なかなか信じられずにいた利道は何度も確認してようやく実感が湧いた。

(間違いない。これだけお金があれば俺は夢を叶えられるぞ)

 

 だからといって、家族には一億もの大金が当選したことを言うつもりはなかった。しかし、代わりに五百万円当選したことにしてフリースクールを設立するとの自分の夢を両親に訴え続けてみる。

「お父さん、スポーツの宝くじで高額当選しました。この新聞を見てください」

「ほほう。あれでか? どれどれ」

 利通の父親は利道にうながされるまま、新聞に目を通す。

「ふむ。この五百万が当選したのだな?」

「そうなんだよ、お父さん。それで僕はあぶく銭になる前に夢であるフリースクールの設立をしたいんだ!」

「うーむ…………」

 利道の父親が苦渋の決断をするまでに数分かかった。

「一度も就職していないことに対しては心配していたが、お前の一番やりたいことだったなそれは。お前の情熱にかけてみるか、失敗しても大きな経験になるだろうしな」

「父さん、ありがとうございます」

 彼は父親から許可をもらった。

「母さんも私の意見に従うそうだ、後、私からも親類にお願いするからお前も親類のみなさんに一人前になった姿を見せるんだぞ」

 父親にそこまでしてもらって、利道は決意を新たにする。そしてその言葉によって決意を固めようとする。


「新しい人生の一ページだ、気を引き締めていくぞ――!!」

 今どきの若者風ないでたちの利道はカジュアルシャツに白っぽい綿パンツ(ズボン)という格好をしている。それが彼の基本的な服装だ。彼は父親から許可をもらったこともあり、すぐさま行動に移る。

 父方の祖母が同居していて二階をアパートとして貸していることを知っている利道は祖母から不動産屋さんを紹介してもらう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る