第2818話:バイン・クルスト~家~

「え、家持ってないの?」

「そりゃあね、家って個人で持つ物じゃなくない?」

「いや、個人で持つ物じゃないか、人の家って落ち着かないし……」

「文化が違うなぁ」

「実際のところ、自分の家を持ってるってどんな感じなんだ?」

「どうって、家を持ってないってのがわからんけど、自分の家は好きにできるのがいいよ。人の家に住むって考えると何にも自由にできなさそうだし……」

「え、自分の家じゃないと自由にしちゃダメなのか?」

「え、そりゃあダメじゃない?」

「結構好き放題してたけどな」

「大家さんにめっちゃ怒られたりしなかった?」

「いやぁ……別に? 大屋ってなんだ?」

「ちょっと待って、もしかして君が言ってる自分の家を持たない生活って、賃貸じゃないとか?」

「賃貸?」

「人の持ってる家を借りることだよ。返す時に元通りにしないと行けなかったり……」

「それは誰かの家なんだろう?」

「まぁ、丸ごと借りてるから自分だけが住んでるみたいなもんだけど」

「俺が言ってるのは好きに寝泊りできる共用の家のことだよ。いろんな場所にあって、誰でも使っていいんだ。みんな気に入らない環境になったらもう使わないみたいな割り切った使い方してるから、好き放題していい」

「みんなが使うってことは割と気を遣わないといけない気がするが……」

「しなくていいんだよ、別にそんなこと」

「文化が違う……」

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