第2803話:スルトム・チャカト〜軟禁〜

「この部屋から出ることは許されないが、中でなら何をしていてもかまわない、だそうだ」

「なるほど、妙な状況ではあるが軟禁というやつか」

 何者かに眠らされ、目が覚めたときはすでにこの部屋の中で彼女と一緒だった。

 攫った奴らが一人、先程の説明だけして出ていった。

「君が寝ている間に部屋の中を調べていたが、普通に生活するぶんには困ることはないぐらいの物資が揃ってた」

「なるほど……部屋の中では自由ということは、部屋から出る努力をしていても良いということでいいと思う?」

「え、部屋から出る努力は流石に咎められるんじゃないかな」

「まぁそうね、少しお腹が空いちゃった。料理でもしましょうか」

「あ、あぁ」

 脱出を画策したと思ったらいきなり料理を始めた。

 何を考えているんだ……

「私ね、昔料理がとても下手で周りからずっと料理だけはするなって言われてたのよね」

 ん?

 そんな料理下手がこの状況でどうして料理を始めたんだろうか。

「それ、僕も食べなきゃダメなやつかい?」

「別に、食べる必要は無いわよ。料理したいだけだから」

「それってどういう……」

「そろそろね、伏せて」

「えぇ!?」

 料理から手を離して姿勢を低くする。

 合わせて僕も伏せる。

 その直後、鍋が爆発した。

「あらあら、壁に穴が空いたわ。外に出られそうだし出ちゃいましょう」

「料理が下手って、そういう……」

 まさか爆発するタイプの料理下手だとは……

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