第2173話:ケイブ・シロマサ~始まりの街~

「ここは始まりの街だよ」

「この世界はここから始まったとかそういう……?」

「いや、ここを起点として物語が始まることが多いからそう呼ばれているんだ。周りに出てくる魔物も弱いし、ちょうどいいんだろうね」

「なるほど……」

 確かに周りにいる魔物が弱いといい訓練になるし、この街を起点に始めた一連の冒険を物語としてまとめるというのもいいかもしれない。

 ただ周りの魔物が弱いから、意外にもさすがに理由はありそうな気がするが……?

「君もこの街から物語を始めてみないかい?」

「なかなか魅力的な提案な気も……いや、結局よくわからないしそもそも僕の物語はもうとっくに始まっているから、この街から物語を始めることはできないな」

「そうですか、それなら仕方ありませんね」

「別の冒険を志す若者が来たら誘ってあげてください」

「もちろんですとも」

「では」


 今日訪れた街はなかなか奇妙な街だった。

 街全体が異常なまでに物語の起点であることに拘っているのだ。

 街を訪れた際、まず奇妙に思ったのは奇妙な年代の偏り。

 子供と中年、老人はいるが若者はあまりいない。

 一定の年代には街の外へ出ての冒険を推奨している割には店で手に入る装備はあまり質が良いとはいい難いものしかなく、この街から冒険を始めろと言わんばかりの構造になっていた。

 後は日誌用ノートがどこでも手に入るのも異常な点に思える。

 何がそこまで冒険の起点であることに拘るのか、明日からも調査をしてみようと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る