第2172話:シライ・フシブツ~分解~

「あんたが分解屋っていう奴か?」

「ああ、そうさ。何を分解してほしいんだ?」

「この箱を分解してほしい。中に大切なものを入れてしまって開かなくなってしまったんだ。どうにか取り出したいんだが……できるか?」

「もちろん。分解屋だからな。かしてみな……よっと、ほらできたよ」

「お、もう出せたのか!?」

「まぁな、要素数2個ならこんなもんだよ。箱も返した方がいいか?」

「ああ、って開いていないじゃないか!」

「そりゃあそうさ。俺は開けて取り出したわけじゃないからな」

「えぇ……」

「構成要素を分けるだけ、だから一瞬で箱と中身を分けることができたのさ」

「何を言っているかはよくわからんが……ありがとう、助かったよ」

「ああ、また何か分解してほしかったら持って来きな~」

 俺のこの能力を完全に活かす依頼というのはめったに来ない。

 物体の構成要素を見抜き、要素ごとに分割することができる超常の能力。

 組み上げられた機械ならパーツ単位でバラすことができるのはもちろん、化合物であれば、構成する成分ごとに分解することが可能。

 そういう能力なんだ。

 なのに、ただ箱の中身を取り出したいだの、組み間違えた模型を壊さずに外してほしいだのとくだらない依頼ばかりだ。

 もっとできることをアピールしていくべきかな。

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