第2170話:キジ・ビーニン~新時代の竜~

「竜って巣で寝てばっかりですよね」

「永き命を持っていて、燃費のあまりよくない大きな体をしていたら生物は基本的に怠惰にしていたいはずで、そりゃあ古い時代の竜は寝ているさ」

「確かに」

「しかし、新時代の体が小さく燃費も良い。あらゆる生物に変化してコミュニケーションしたり、娯楽を享受したりできるようになった竜は寝てるなんてもったいないと人間に紛れ飯を食い遊び暮らしをするようになっているのだ」

「本当にそんな新時代の竜なんて存在しているんですかぁ? 見かけたっていうのもただ竜っぽい種族の人と言うだけでは?」

「竜の姿と人の姿を行き来するのを見た。そいつは完全に人目を忍んで変身できていると思っているらしくて、毎日決まった場所で変身しては飛んで街を去っているんだ」

「去るってどこに?」

「そりゃあ巣穴だろう」

「人の姿を取れて人とコミュニケーションが取れるなら街の中に住んでもいいんじゃないの?」

「何か事情があるのかもしれない。もっと快適な別の街に宿をとっているとか、夜は変身できないから街にはいられないとか」

「ありそうな話だ」

「まぁ、さすがに直接聞くのは怖いんだよな。人の姿をして人に紛れて遊んでいても竜だ。うっかりで殺されるかもしれない」

「毎日飛び去るところは覗いていてもそういうところはビビるんだ」

「まぁな。俺の思うギリギリのラインだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る