第2162話:クパー・シルク~乾燥~

「あーいい日差しだ」

 夏真っ盛りとある日、日差しを浴びに浜辺で寝そべっていると隣に誰か同じ目的なのか寝そべった。

 どんな人かと思い、ちらとそちらの方へ目をやると海産物だった。

 いや、見た目で他人をそう表現するのは人種差別かもしれない。

 ともかく、見た目での身体的特徴を強いて上げるとしたら彼はイカである。

 海洋軟体生物、おおよそ10本程度の触腕を持ち、うねうねと動く、のイカを大きく、大体人間大にして要所要所を地上生活に適応できるようにしたような、そんな見た目をしていた。

 珍しいタイプの異形の存在を見かけて驚いたという感想を抱いた次に思ったことは、いいのか?という疑問である。

 イカを干して作る食材という物があることは大体知っている。

 日光に晒し、水分を抜くことでうまみ成分を凝縮させたいわゆるスルメと呼ばれる食材だ。

 セルフ日干しなのか? それとも、何か種族的に意味のある行為なのだろうか。

 身体が鍛えられるとか、この日差しに耐えてこそ一人前とか、別の種族に生まれ変わる儀式だとか。イカ人からスルメ人とかに……

 ああ、だめだ。こんな日差しの中で変なことを考えていたらだんだん意識が……


「はっ!」

 ここは……? 浜辺で日光浴をしていて気絶したはず……

「ああ、大丈夫ですか?」

 声を掛けてきたのは先ほど見かけたイカ人だ。

「横で気絶されたのでまずいと思い運ばせていただきました。大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとう……助かったよ」

 危ないところを助けてもらい、先ほどイカ人だのスルメ人だの考えていたことをとても恥じることになった。

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