第2153話:ジャーニ・フラッシング~復活の呪文~

「なんだ……?」

 ターミナルの窓口で何か呪文のようなものを唱えている人を見かけた。

 知らない言語かとも思ったが、どうにも翻訳機が何の反応もしていないようだし、言語でもなさそうな、意味の通らない謎の音の組み合わせらしい。

 頭がおかしくなってしまった人なのかとも思ったが唱え終わった途端に窓口の人が何かを渡した。

 もしかしたら言語以外の意味のある文字列で、それを符号としてあの窓口で伝えると何らかのサービスが受けられるのだろうか。

「もし」

「はい、何でしょう?」

「先ほどこの窓口で呪文のようなものを唱えている人を見かけたのですが、あれは何をしていたのですか?」

「あれは復活の呪文を唱えていたのです」

「復活の呪文!? あのセーブデータをカートリッジ内に保存できない時代に使われていたという……?」

「まぁ、それがサービス名の由来ですね。簡単に言えば、保険サービスです。特定の世界では死後の世界に覚えている限りの所持品を持ち込むことができるという死後観があり、その組み合わせを復活の呪文の形で記憶して死ぬようにしており、ここはその死後観の保証をするための窓口と言うわけです」

「もし、私がここで何か呪文を唱えたら何かをもらえたり?」

「しないですね」

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