第2144話:カル・サータ~シェルター~
「ここを開けてくれ!」
ダンダンダンダンとドアを叩き懇願する。
「ダメだ。もうこのドアを開けるわけにはいかない。もうあきらめてくれ。せめてもの弔いに俺はこのドアのところに居続けてやるから」
「な……何を言っているんだよ。そんなこと全然弔いにもならないだろ。いいからここを開けてくれよ……」
「ダメだ」
「畜生……!」
もうダメだ、一人を見捨てることに対する罪悪感を正当化しようとしている。
このまま懇願したところでこのドアは開くことは無いだろう。
そして他のシェルターを探す時間などもう無い。
「仕方ない、話し相手ぐらいにはなってくれるんだろ?」
「あ、あぁ……」
こうなったらどうにかしてここを開けさせるしかない。
懇願ではだめだ。
同情意識を持たせてどうにか開けさせる。それしかない。
「もう開けなくてもいいからそこにいてくれよ。最後まで話し相手が欲しいんだ」
「それぐらいならいいぜ。どんな話をする? 日常のたわいない話か?」
「ああ、そうだな……」
その後いろいろな話をした。
子供のころの話から始まり、先日した小さなミスが大事になりかけた話だったりとだんだん今に近づいてきて今の話になってきた。
「まさか隕石が住んでる地域を滅ぼすなんて予想が出るなんてな」
「ああ、シェルターがあって助かったよな」
「俺はそこに入れてない」
「そうだったな……」
「しかし、こんな話を続けていても隕石はまだ落ちてこないし、あのタイミングだったら全然間に合ったんじゃないか?」
「そうだったかもしれない……」
「もしかしたら今からでも間に合うんじゃないか?」
「そうかも……」
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