第2058話:ヤーガ・ラオディン~負債~

「よぉ、久しぶりだなぁお前」

「あ、はは、お久しぶりです」

 彼は私が生前に借金をしていた人で、私はその負債が利息が無限に膨らんで利息分だけで月収の5倍になったところで自殺した。

 つまり、彼にとって私は死んで逃げた債務者なのだがついにこの世界で見つかってしまった。

「元気してたか?」

「まぁ、元気ですよ。あの頃持ってたビョーキもこっちでは全部治りましたし、安定した収入もありますから……負債もないし……あ」

「そうかそうか、元気にやっているか。ん、そんなに身構えるなよ。まぁお前の未払いだった莫大な借金は結局帰ってくることは無かったが……別に今はあんときの金融会社の社員ってわけでもない、つーわけでそもそも取り立てる理由がない」

「それは……、助かりますね。まぁもう死んだんですけど」

「お前は自殺でな」

「お前はってことはあなたは違うんですか?」

「いや、普通に自殺以外にもあるだろ、老衰とかな」

「でもあなたそんな年じゃなかったですよね。病気か、それとも他殺?」

「他殺、取り立てに行ったら債務者が突然包丁持って突っ込んできてな。なんもできずにそのままぽっくりとって感じだ」

「そんな債務者がいるの……?」

「いるんだなぁこれが。勝手に死ぬ債務者もいるし、こっちを殺しにかかってくる債務者もいる。油断した俺が悪いが、殺しに来た債務者も悪い」

 いや、まぁお金を返さない上に殺しに来たやつだけが悪いような気もするが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る