第1958話:イーリン・ディアル~狂気の招待状~
他の地域に住んでいる人はほとんどが全くと言っていいほど近づかない場所がある。
曰く、その場所では誰もが正気を保つことは難しく、鉄壁のメンタルを持っている者であろうとも正気を維持することができないという。
そんな危険地帯にわざわざ訪れるもの好きも昔はいたものの、数件の生還例が共有されるようになってからはほとんどだれも訪れなくなった。
そんな地域から周りに対して、唐突に招待状が配布された。
誘われてもそんな地域に誰も行かないと思われていたが、一部のもの好きはメンタル試しだとばかりに数人が手を挙げた。
私もそのうちの一人だ。
「ようこそおいでくださいました」
地区を囲む高い壁、その切れ目という形で存在する唯一の入口に集まったのは1人と8人。
1人が地区からの迎えの人間で、噂のような正気を失った人間という印象は受けない。
むしろ紳士的な印象を受けるほどだ。
いや、彼はこの地区で正気を失ったものではなく、この地区に住む者、つまりはこの地区に住んでなお正気を失わない者ということか。
私を含めた8人はその佇まいにいろいろな感想を抱いた、私は畏怖を、他には侮った者もいただろう。
わざわざ地区の入口の外側までの出迎えとは、入ってすぐに正気を失う可能性があることの示唆であることまで考えられる。
「では、皆さまこちらへどうぞ」
案内人の先導を受けて、私たちは壁の中へと足を踏み入れた。
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