第1928話:ハーバ・レアリス~留守~

「ごめんくださーい」

 玄関で奥に向かって呼び掛けてみるが返事がない。

「留守なのかな……?」

 でも玄関には特にカギがかかっていなかったし、留守だとしたらめちゃくちゃ不用心だなぁ……

 しかしどうしたものか、出直すのも面倒だ。

 となると、中で待たせてもらいたいが……

 勝手に上がってもいい物なのだろうか。

 まぁ、いいか。鍵をかけずに出かけている奴が悪いし、出直してまた入れ違いになっても面倒だ。

 ここで待つのが一番効率がいいだろう。

「お茶淹れちゃお」

 待つのにのども乾くし、勝手にだが台所を使わせてもらってお茶を淹れよう。ついでに茶菓子も探そう。

「よしよし、なかなか良さそうなものがあったぞ」

 今日俺が来ることはわかってるはずだし、この茶菓子も俺に向けて用意したものだろう。

 だから俺が食っても問題ないというわけだな。

 うんうん、何も問題はない。


「よぉ、鍵をかけないなんて不用心だぞ」

「……そうだな、次からは鍵をかけるようにしよう」

「あとこの菓子うまいな、どこで買ったんだ?」

「こないだ別の町に行ったときにな。おい、もう残ってないじゃないか」

「まぁうまかったからな。あ、そうだ。次からは鍵をかけるなら合鍵くれよ」

「お前が来るって日に家を空けるのをやめることにするよ」

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