第1904話:ジャ・ラバニン~妖怪の山~

「この山には妖怪が出る」

「妖怪……、モンスターとはまた違うんですか?」

 モンスターは危険な存在すべてを指す、中には特殊な能力や魔法を操る者もおり、狩りを生業にしている人が継続的に狩り続けることで安全な街道を実現させているらしい。

「妖怪はモンスターに分類されることもあるが、基本的には想像されるモンスターとは別の者だ。人に危害を加えるものも多く、狩りを依頼されることもあるが、たいていの場合は妖怪専門のハンターに仕事は任せることになっている」

「それだけ特殊な相手ということですね?」

「そうだ、実態が無かったり、空間に対して罠を張ったり、生態に関してもその個体それぞれだったりしてわかりづらいというのが専門性を増している要因ということだな。ただ攻撃性に関してはそれぞれで、10人の討伐体が気づいたら家でパーティをしていたなんてこともある。これは温和で人間を傷つけない個体の例だな」

「討伐体がパーティを!?」

「幻術を使う者も多いんだ。死なない例だと大抵は幻術や何かの不思議な能力で気づかぬままに撤退させられている」

「それは身を守るために?」

「いや、討伐隊に対してはそうだろうが、討伐隊が出るまでになった理由の事例が結構無差別に発生してたな。その妖怪がいる通りを通ると絶対に目的地にたどり着けなくなるというもの」

「それはヤバい」

「被害者の話だと道がわからなくなるのではなく、感覚的には迷っているという認識もないままに違う場所を訪れるらしい。その場所の人に「何の用ですか?」と問われて初めて自分が目的地以外の場所を目指して歩いていたということに気づくらしい」

「やっば……」

「だからこの山に入るときは気を付けないといけないのさ」

「はー、なるほどなぁ……」

「そうだな、あとは今話している相手がだれかわからなくなるとかな。お前、俺が誰かわかって話を聞いているかい?」

「へ?」

 言われてみると誰かも知らなかった一緒に歩いて話をしていた男は、風が吹いて飛んできた木の葉に紛れて消えてしまった。

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