第1877話:フッチ・パリポ~リセマラ~

「リセマラ……?」

「そう、大抵のゲームは始めた時にかなりの量のリソースが分配されるから、ランダム要素に突っ込んでいい値を取得するためにゲームを最初からやり直すんだよ」

「なるほどなぁ、それで今そのゲームを何度も最初からやり直してるんだ」

「ああ、もう何回目かな。だから序盤の操作は慣れたものさ」

「へぇ、序盤以外の操作は?」

「……その辺はおいおいって感じ。チュートリアルも何十とやってるわけだし何とかなるよ」

「なるほど」

 というような会話をこないだした。

 ということを思い出したのも、今会話をしている人の身の上話がそれを連想させるものだったからだ。

 なんでも彼の生まれた世界、というか施設では優れた人間を生産することを目的としていたらしい。

 その際に生まれた時点で基準を満たさない子供は育成するコストがもったいないと処分されていたらしい。

 それはまぁリセマラといえるだろう。

 その選別に生き残った彼はその際に処分された子供たちにこの世界で会うことはないだろうかと常に心配しているらしい。

 彼自身が人間を超えた性能を持っていたことから平均的な人間の寿命をはるかに超えた年齢まで生きたということだし、生まれてすぐにこちらの世界に来た彼らと出会うことはないし、そもそも自我が確立する前に殺された子供は自分が生まれて死んだ経緯を知ることはない。

 誰も彼をそんな理由で恨むこと自体出来ないのだが、彼はそれを心配しているのだ。

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