第1842話:カルバ・トラオウ~後の祭り~

「ぬわー! 今起きた!」

 今日は祭りの日だったはずだ。

「もう夜じゃあないか!」

「あ、今更起きたのか。祭りの主役ともあろうものが」

「気づいていたのならなんで起こしてくれなかったんだ!」

「いやぁ、ずいぶんぐっすりと幸せそうに寝ていたからさ。めちゃくちゃ起こしたけど、起きなかったというのもあるけど」

「途中であきらめたと。結局祭りの方はどうだったんだ?」

「代役がいたからな。つつがなく進行し、しっかりと終ったよ」

「そうか……」

「しかし、これっきりにしてほしいものだよ」

「ああ、次はないよ。ところで、誰が代役を?」

「…………」

「もしかして君が?」

「そうだよ、俺は君の横で見てたし役はちゃんと覚えてたからね」

「ああ、ありがとう。助かったよ」

「そうだな、また寝坊してくれてかまわない。俺がいつでも代役はやってやるからさ」

「ははは、もう二度と寝坊はしないよ」

「そうだね、大丈夫だよ。君はもう寝坊しない。だって、君にはもう祭りで役割が回ってくることはないんだからね」

「え? それってどういう……」

「黙ってようかと思ったけど、やっぱり言ってしまおう。君が可哀そうだしね」

「まさか……」

「そう、今回の寝坊による欠席で君を主役から外すことが決定したんだ」

「そんな……」

「そりゃあね、俺一人が起こしただけで起きなかったならともかく、実際はみんなで起こして起きなかったんだからさ」

「そんなだったのか……」

「ああ、正直仕方なかったかなと思うよ、あの寝っぷりは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る