第1812話:キベー・ブリアム~ドラゴンの煮込み~

「久しぶりに食べたい料理があるんだよな」

「お、なんだ? なんでも食べに行こうじゃないか」

「あれなんだけど、ドラゴンの煮込み」

「ドラゴンの煮込み?」

「そう、ドラゴンの肉を味噌やらなんやらで煮込んだものなんだが、これがまぁ微妙な味でな」

「微妙な味なのかよ」

「おお、もう微妙な味だ。ドラゴンをここまで愚弄するかよというような味でな、それでいて癖になる味なんだよ」

「そんな料理が……」

「そう、そんな料理だからこの世界で見つかるかどうか怪しいんだよ……」

「まぁ、探してみようか」

 そんな会話があったのが去年、いまだにドラゴンの煮込みは見つかっていない。

「やっぱりないんじゃないか」

「ないのかなぁ、やっぱり」

 ドラゴンを煮込んだ料理というのはいくつか見つかったのだが、どれもそれなりにうまいし、時には不思議な能力に開花するようなものであった。

 彼が言うような、ドラゴンを愚弄するような味の味噌やらなんやらで煮込んだドラゴンの煮込み料理という物は見つからない。

 そもそも、味噌やらなんやらで煮込んであるなら大抵のものは美味くなるだろう。

 誰がそんな微妙な味の料理にドラゴンを加工して客に提供するというのだ。

「ところで、お前そのドラゴンの煮込みってもともとどこで食べたんだ?」

「どこだったかなぁ、ちゃんと覚えてないんだが……もしかしたら夢の中だったかもしれないなぁ、俺の住んでた世界、ドラゴンとかいなかったし」

「は?」

「あ、いやこの世界に来てから食べたかもしれないから、あるかもしれないだろ?」

「いや、ないんじゃねぇかな」

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