第1801話:ヒル・レウル~殺人ゲーム~
「このゲームからは誰かを殺さないと出ることはできない」
そう確認するようにアナウンスが響く。
なんでこんな場所にいるんだと、記憶を手繰ろうとしてもこの会場で説明を聞いているところからしか思い出せない。
その前はどうだったかというのもダメだ。
特に何も起きていない記憶に残らない日常、そのどこかのタイミングで意識を失ってかここに来たということだ。
殺人ゲームというからにはこの入り組んでいるフィールドのどこかに俺以外の参加者がいて、誰かの命を狙っているのだろう。
俺には誰かを殺す度胸なんてない。
かといって殺されるのもごめんだ。
ならば仕方ない、殺されるのも殺すのもごめんだから、しばらく隠れてすべてが終わるのを待って脱出のチャンスを探ろう。
どれぐらい経っただろう。
あれから何度か「誰かを殺さないと出ることができない」というアナウンスが流れた。
変化がないということは誰もまだ殺してないということだろうか。
もしかしたらほかのみんなも俺と同じように誰も殺したくないという考え方なのかもしれない。
それならしばらく耐え続ければ主催者が音を上げて解放されるかもしれない。
きっとそうなるだろう。
まだか……?
あれから数十度同じアナウンスを聞いて、おなかもすいてきた。
まだなのか……?
というか、あのアナウンスも録音音声を自動で流しているだけのような気もするし、完全に放置されているのでは……?
だんだん焦りが出てきた、動くべきか……?
そうだ、食料だ。
食料を探しに行くだけにしよう。
耐えきるには食料が必要だ。
こんなイベントだし長丁場になることを想定してフィールドには食料が配置されているに違いない。
探しに行こう。
「おかしい……」
食料は見つけた。
いくらかの保存食が入った袋が落ちているのを見つけたんだ。
缶詰があるのに缶切りがないみたいな事態も起きていない。食料を得たことになんの問題もないんだ。
おかしいのは他のことだ。
誰も見かけない……
他の参加者がいるはずで、食料を探して結構探索したはずなのに誰とも会わなかった。
とある疑念が頭に過る。
自動で繰り返されるアナウンス、誰もいないフィールド、やけに長期間を想定した保存食が入った袋。
もしかして、このフィールドの中には俺しかないのではないか……?
まだ準備期間で、人を集めている途中とか、そういう奴なのかもしれない。
誰もいないフィールドでいったい誰を殺したらここから出ることができるっていうんだ……
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