第1743話:ホフティ・ラス~言った通り~
「な? 俺の言った通りにしたら、うまく行っただろ?」
突然現れた未来がわかるという男、如何にも胡散臭かったのだが、信じてくれと懇願されるのでどうしたらいいのかずっと悩んでいたことについて相談した。
その結果、本当に彼が言った通りの事が起き、彼の言った通りに行動したら、彼が言った通りの、完璧と言っていいほどの結果になった。
それ以降、やたらと近くにいるようになった彼にどうするべきか、どうなるのかを相談するようになった。
今日の買い物にはどの店に行ったら良いか、昼食は何を食べるのがベストか、道はどちらに行けばいいのかといった小さなことから、将来どういう道に進めばいいのかといった、大きな決断まですべての決断において彼に相談するようになった。
彼はそれに対していつも的確な答えをくれ、少し長期に渡るものや、他者との詳細な受け答えが必要になることに関してはフローチャートを作成するなど、親切に教えてくれた。
どうして彼がそうまでして僕の未来を支えてくれるのかはわからないが、彼を信じていれば無数の正解を積み重ねられる。
それだけは確かだった。
「また君の言った通りになったよ」
僕がもう成功し続け、またひとつ大きな成功をした頃
「だろ? さて、そろそろ頃合いかな」
彼はそう言い出した。
「俺はそろそろ行くよ、まぁずいぶん成功したし、もう俺の助けはなくても大丈夫だろう」
確かに、人生が安定と呼べる台の上に乗った感じがある。
ならば、もう彼の助言無しでもなんでもできるだろう。
「じゃあな」
そう言って彼は僕の元から去っていった。
そうして、一人になった僕は次に何をしようかと考える。
安定を得た上ならば何でもできるはず、そう思い考えるがなにも浮かばない。
そもそも、今のこの立場はなんだ?
僕はこれを望んだんだったか、いや、彼がこちらの道の方が良いと言って選んだ道だったような気がする。
そうして思い当たる、僕はなにも決めていないだけじゃなく、いつしか何を求めるかまで、彼の言った通りにしていたんだった。
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