第1742話:テブー・エイフク~記録~

「この世界のすべてを記録してあるものがあるじゃないか、媒体は様々な形をしていて、木の葉だとか、石板だとか、本だとか、電子媒体だとか、様々ね」

「それがこれですか」

 机の上に置いてあるのは半クロン程度の大きさの石の箱。

「この中にはこの世界が始まってから今までのすべての記録が保存されている、それは間違いないんだが……」

 苦虫をかみつぶしたような顔でうなっている。

「何か問題でも?」

「いやなに、これは間違いなくすべてを記録している記録媒体なんだが……読めないんだ」

「読めない」

「そう、この媒体形式の問題点の一つなんだが、書き込み中は読み出しができなくて……」

「すべての情報を記録するものだから、常時書き込み続けられていて、読みだす隙がないってことですか?」

「そう、そういうこと。今までの記録媒体は書き込み中も読めたんだけど、今のこれは読めないんだよなぁ」

「大問題じゃないですか」

 記録というものはアクセスできて初めて意味があるようなものなのに、アクセスできないっていうのはどう考えても問題だ。

「そうなんだよねぇ、早く他の媒体に移り変わってくれるといいんだけど、今の割合がどれぐらいなのかも中の情報を見てみないことにはわからないんだ」

「大変だなぁ……」

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