第1739話:テイ・テブリット~地獄からのいざない~

「その先にはいかない方がいい」

 ここは死者の国。

 この世界全体がそうといえばそうではあるのだが、ここはその中でも死者として生活することを選んだ者が住んでいる国だ。

 簡単に言ってしまえばそれぞれの伝承の死後の世界の生活様式を再現している国だ。

「その先は地獄と呼ばれる、いわゆる悪人が裁かれる世界だ。踏み込めば裁判にかけられてすべての罪を洗いざらい並べられ、その罪に合った獄へ落とされることになる。当然迷い込んだは通用しないし、生きて出られるとは限らない」

「ひぇ」

「わかったら戻ってくるんだ。違う場所なら行って帰ってくることもできる。見学するならそっちにするといい」

「はぁわかりました……」

「よしよし、いい子だ。振り返ってはいけない。ここはそういうルールが多い場所も多いからな、振り返らずにこっちへ下がってくるんだ、ゆっくり、ゆっくりな」

「わかりました」

 言われた通りに下がっていく、確かに聞いたことがある。

 ここは振り向いてはいけないと、後ろからの声を頼りに下がっていき

「ここまでこれば安心だ、慌てないで、ゆっくりとね」

 声の主が手の届くところに来た。

 後ろから手が伸びてきて、肩を抱きとめようとしてくる。

「よし、もう大丈夫。さぁ行こうかぁ!?」

 その伸びてきた腕をそのままつかみ取り、投げ飛ばす。

「お前がここらに迷い込んだ人々を地獄へ誘い込んでることは調査でわかってた。地獄の使者が嘘をついて人を呼び込むなんてな、何を考えているんだか……、閻魔様は許してるのかい?」


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