第1724話:トルマル・ナミー~宝石商~
「石の価値って不思議なものでさ、構成する物質自体はほぼ同一、素人目には成分表だけ見せられても違いなんて全くわかりはしないのに、ほんのわずかな違いにより、こうも表情を変えるんだ」
そう語る宝石商の声は、ただ説明してるだけではなく語ること自体が楽しそうであり、まるで宝石に恋でもしているかのような話し方だ。
「この赤い宝石と青い宝石、全く違う色を持っているし、魔術的な触媒として扱う際は別物として扱われる。しかし、物質としてはほぼ同一、構成している元素そのものは同じものであり、単に別の構造を持っているが故に色は元より、魔術特性も異なる。更には石食をするものにとっては味や舌触りも異なるそうだ」
私の体は石食に適してない体なのが、非常に残念だと語る。
「石食できる体だったら逆に石に対しての熱意の方向性が変わっていたかもしれないが……と、話が逸れたね。つまり、何が言いたいかと言えば、君が持ってきたそれは確かにこの宝石とほぼ同一の構成の物質ではあるが、構造が違ってね。君がどう物質の識別をしているかはわからないが、ダイヤモンドと炭の塊は全く価値が異なるんだ」
そう断言されてしまった。
最初からそう言ってくれればよかったのに、語りが仰々しい宝石商だ。
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