第1713話:フリス・パウン~泳ぐ切り身~

「魚を獲りに来たんだよな? 釣り竿とかはいらないのか?」

 誘われて魚を獲りに来たんだが、見慣れた道具が一切ない。

「いらない。この辺にいる魚はこういう道具を使うんだ」

「でかいスプーン……?」

「そう、これですくい上げるようにして獲るんだ」

 泳いでる魚をすくい上げるように?

「そんな簡単に獲れるものなのか」

「ああ、ここのはかなり楽だよ。なんせ食べられるために存在するからな」

「食べられるために存在する……?」

「そういうことがあるんだよ。設計された世界とかだとありがちなんだ。役割を持った生物ってのがさ。知らないなら見たらたまげると思うぜ」

「どんな魚なんだ……」

「さーて、獲るぞ」

 そう言って川の中にざぶざぶと入っていく。

「ほら、お前も来いよ」

「あ、あぁ」

 渡された道具を持って川の中へ入る。

 確かに魚影らしきものがいくつか見える。

「とりあえずこいつらは警戒心がないから、適当に頭の方からすくい上げてやれば獲れる」

 そうやって川岸に向かって

「簡単だな」

「そうはいっても獲り方がわかるまでは結構かかったんだよ。釣り竿では釣れないし、網でも獲れなかったんだよね」

「このスプーンでは獲れたと」

「そういう設定になってたんだろうな、そんで獲れたやつ見てみなよ」

「そういや驚くって言ってたよな。どれどれ?」

 川辺に打ち上げられていた魚はすでに造りにされていた。

「驚いたか? ここの魚はすでに調理済みなんだ、面白いだろ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る