第1681話:レイレ・ウィント~タコ以下~

「このタコ以下め!」

 友人が誰かを罵倒して追い払っている場面に遭遇した。

 彼は理知的で頭もキレるがその分、他者に対して厳しい面がある。

「なぁ、その罵倒しているところよく見かけるんだけど、どういう意味での罵倒なんだ?」

「知らないのか、タコはとても賢い生物である程度の難しさのパズルは解けるし全身が筋肉だからめちゃくちゃパワフルなんだ。さらにそれでいて脚が8本もある」

 脚が8本あるのはまぁ、すごいが……

「めちゃくちゃすごい生物じゃないか、それ以下は仕方ないんじゃないか?」

「いや、賢いとはいえ所詮は動物だ。文明を持つほどに進化したタコでもない限りは人以下だよ」

 人以下の中ではすごい生物っていう感じなだけか。

「じゃあ、よっぽどタコ以下の人なんていないじゃないか……」

「そうだよ。だから罵倒なんじゃないか、割と軽めのな」

「軽めかぁ」

「軽めだよ、軽め」

 これで軽めと表現する彼の罵倒感性はどうかと思うが、まぁタコ自体はすごい生物というのであれば軽いのかもなぁ。

「ここにタコを罵倒に使うものがいると聞いてきた」

 突然の来客、今話していた内容を聞きつけてきたとなると、とんでもない地獄耳だ。

 頭部をヘルメットのようなもので覆っているので、顔はわからない。

「なんだ君は、いきなりやってきて失礼じゃないか、タコ以下かね君は」

 タコはちゃんとアポを取ってから訪問するのだろうかと思ったが、たぶんしないだろう。

「タコ以下か……、いや、タコそのものだ」

 ヘルメットを取る、その丸みのある顔、服を内から動かすその体はいくつもの腕があるように見えた。

 タコを罵倒に使っていたら、タコが訪ねてきた。

「まったく、初対面の相手に対して突然罵倒をするなんて君の礼儀はだな」

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