第1673話:ヒシ・リエンツ~緘口令~

「このことは誰にも言ってはいけないよ」

「なぜ?」

「いらぬ混乱を招かないためだ、この話は扱いが難しいんだ」

「なるほどなぁ、誰になら言ってもいい?」

「誰にだってだめだ、誰かに話した時点で隠せる話ではなくなってしまうんだよね」

「私にはよかったの?」

「君は現場にいた、当事者じゃないか。当事者になってまで何が起きていたのかがわからないのはさすがに酷だというものだ」

「なら、当事者になった人には話してもいいっていうことですね!」

「ん、いや君から話すのはだめだ、また聞きでは正しく理解できないだろう。しかも、君こうやって口止めしっかりしたりとか、そういうことできないタイプだろう?」

「確かにそれはそう」

「もし誰か巻き込んじゃったな~って思ったら僕を呼んでくれればいい、相手に応じて説明させてもらうよ」

「わかりました!」

「じゃあ今日は帰ってくれていいよ、また困ったことがあったら連絡しなさい」

「はい! ありがとうございます! ところで……」

「なんだい?」

「この話ってこんな人がいっぱいいる居酒屋で話してもいい話だったんですか?」

「ん、ああもちろん。それぐらいは問題ないだろう。こんな居酒屋で他の客の話を聞いている奴なんかいないよ。大丈夫」

「ほんとかなぁ……」

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