第1661話:ニケル・ベーレン~単位系~

「この棒って捨ててもいいですか?」

「棒……? ああそれは捨てちゃダメだよ。最近使うことは少なくなってきてるけども、単位基準棒だよ。当然レプリカだけどね」

「単位標準棒って、クロンの? クロンってこんな長かったでしたっけ?」

「いや? これは大体3.24クロンある。メルギベ単位棒。1メルギベぴったりの長さだ」

「メルギベ……? 知らない単位ですね。どこかの世界での標準単位系なんですか?」

「いや、この世界で生まれたこの世界の単位系だよ。まぁ大昔の単位乱立時代の名残ってやつだ。今ではほとんど使われていなくて、こうしてマニアのガラクタ置き場にわずかに名残があるだけって感じだな」

「それ本当に捨てちゃダメですか……?」

「あったりまえだろ、そういう標準になれなかった物ってのは記録に残りにくいんだよ。忘れられたらすぐに失われて行ってしまうんだぞ」

「確かにそれはそうですが、えぇ……」

「だからこれもそれも、この辺も捨てちゃだめだ。ここから失われたら本当に失われかねないものばかりだからな」

「いや、捨てましょうよ。せめて、片付けましょうよ」

「まぁ、整理ならしももいいか……」

「ところで、長さの基準って何かがあってそれをもとにして原器がつくられると記憶しているのですが、メルギベは何が基になった長さなんです?」

「あー、確かメルギベという巨人がいて、その足の長さだったかな」

「これ脚の長さなんですか?」

「かかとからつま先のな、脚じゃなくて足だよ。まぁ、そのメルギベってやつももうはるか昔の存在だし、そいつと同じ種族の巨人ももういない。今更そのメルギベの足が1メルギベあるのかもわからないって感じだな」

「はぁ~」

「お、感心した? こういうのが醍醐味だよな、こういうのはさ」


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