第1592話:ヒッテ・ロルバ~思考漏出~

 最近、やけに人に見られる。

 どういうわけか、町を歩いていると変な目で見られるんだ。

 すごい見られる。

 こんなに見られるとは何か理由があるのではないかと思い、自分の身なりをすごい改めて、改めて、改めて何もおかしいところはないのだけれど、視線を感じる。

 なんだ……? なんだ……? と疑心暗鬼になってしまい、私は外に出られなくなった。

 誰もかれもが私のことを見て、何かを考えていると思うと気が気でないのだ。

 そういえば、こんなことが前にも生きているときにあった気がする。

 確か、あの時はなんだったかな。

 そうだ、あれは夢だった気がする。

 夢の中で、最近と同じようにめちゃくちゃみられる夢を見たのだ。

 その時は、確か……突然後ろから殴られて……目が覚めたら部屋で寝ていたんだっけ。

 でもなんか数日経過してて、変だなぁってなったんだ。

 ちょうど夢で過ごした期間が経ってたから本当に夢だったのかなって。

 夢の中で話した知り合いはみんな知らないっていうから、夢だったと思ってたけど、もしかしたらあれは夢じゃなかったのかもしれない。

 じゃあなんで見られていたのか、知り合いはなぜ知らないと言ったのか。

 全然心当たりがない。

 いったいどうなってしまったんだ。

 そうやって頭を抱えていると、部屋の郵便受けがカタンと鳴る。

 何かが投函されたんだ、今? 誰が何を投函したというのだろう。

 恐る恐る見てみると『隣のものですが、考えていることが壁越しでも聞こえてますよ』と書いてあった。

 つまり、どういうことだ?

 今この頭の中で考えていることが回りに聞こえているということだろうか。

 最近見られていたのは考えていたことが回りに聞こえていたから?

 そういえば、昔も周りの人がやけに私のことに関しては勘がいいことがあった、あれももしかして少しだけ私の考えていることが聞こえていたからだったのかもしれない。

 そこまで考えて、最近見られていることに気付くまで考えていたことを思い出して恥ずかしくなる。

 これでは外に出られない……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る