第1590話:シキツ・キビオキ~高低差~
壁がある。
この壁は天井に繋がっているわけでも、はるか高みまで続いているわけではない、背丈よりも少し高いだけの壁だ。
精神的な壁でもなく、物理的な壁。
しかし、私にはこの壁を乗り越えるだけの力はない。
それは仕方ないとして、今はこれを乗り越えてその先に向かう必要がある。
なぜなら、壁の上から挑発されているからだ。
今すぐにとびかかって蹴っ飛ばして壁から落としてやりたいが、私には悲しいことにこの壁を乗り越える力がないのだ。
上にいるやつはそれを十分に理解しているからめちゃくちゃに煽ってくる。
ここを出てほかの場所で再開したときのことを考えていないのかというぐらい煽ってくるが、実際にその心配はないので無限に煽ってくる。
こちらも負けじと口で言い返すが、地の利とはここまでも勢いに影響するのかというぐらい効いていない。
ぐるぐるとその場を回りながら言い返したり煽られたりを続けていると、気づいたことがある。
そうだそうだ、この壁を乗り越える必要はない。
一矢報いてすっきりするだけならば、もっと理知的でスマートな方法があるじゃないか。
そう、気づいたので足元を確認してスっとしゃがみ込む。
それを指摘する煽りの声はまだ続いているが気にしない、解決が見えたときストレスはこうもさっぱり解消されるものかという気持ちだ。
そのまま拾った拳大の石を壁の上のそいつの頭に向けて投げつけた。
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