第1581話:フアイル・シルス~トカゲ人間~

「うわ、トカゲ人間だ」

「違う、私はドラゴノイドだ」

「え、どう違うの?」

 たまにこういう無知で差別的な者からトカゲ人間などという蔑称で呼ばれることがあるが、私は誇り高いドラゴノイド、この程度でムキになって怒ったりはしない。懇切丁寧に解説してやろう。

「我々ドラゴノイドはトカゲではなく、ドラゴンに近い種なのだ。トカゲ人間というのならば、爬虫類から進化して二足歩行になり知恵を得たレプティリアンのことを指すのが一般的だな」

「そいつは聞き捨てならねぇなぁ!」

「何者」

「あ、またトカゲ人間だ!」

「違う、レプティリアンだ!」

「やはりトカゲ人間ではないか」

「違うと言っているだろう。だから貴様らドラゴノイドは……爬虫人類の貴族のように振る舞いよって……」

「レプティリアンの人はトカゲ人間って言われるの嫌なんですか?」

「当然だ。トカゲ人間などという呼び名、恥ずべきものだ」

「はっ、我らのようにドラゴンの眷属たるドラゴノイドでもなく、ただトカゲから進化しただけの人間がよく言ったものだ」

「なにおぅ!?」

「ケンカしないでくださいよ。そうだ、そういえば他にはどういう人がいるんです? そういう、えーと、爬虫人類ってやつ!」

「む、まぁ呼び名は様々だがいくらかはいる。例えばワグライダやリザードマンだとか……あとは見た目だけならドラゴニュートとかも割とこっちよりか? あれは人間とドラゴンのハーフだが……」

「あとはトカゲ人間か」

「それは蔑称なのでは?」

「いや、いないことはない。トカゲの獣人なんかがトカゲ人間と言っても怒らない。呼ばれ慣れてるからかな」

「実際のところ、自分たち以外の爬虫人類は種族の見分けつかないから大体他種族のことはトカゲ人間って呼ぶんだよな」

「ああ、そういうところはあるな」

「適当だなぁ……」

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