第1570話:アルテ・ベガニア~世界の裏~

「やあ、今日も元気そうだね」

「君も元気そうで何よりだ。こちらの生活にも慣れたようだね」

「もちろん。こちらの管理者はわかってくれるのか心配だったのだけど、健康で文化的で自由な生活をしっかりと担保してくれて、毎日が幸せだ」

 前の都市での生活期間を終え、この都市にやってきたのが数週前、新たな管理者の采配の元友人もでき、新たに与えられた健康な若き肉体もとても具合がいい。

「しかし、どうにも気にかかっていることがある」

「なんだい?」

「この都市へ案内してくれた人がいたんだが、あの人は働いているのかい?」

「働くって何だい?」

「んー、僕も昔の都市にいた時に過去の映像作品の中で見ただけだったんだけど、管理者が現れるまでの人間は衣食住全てを働いて得る必要があったらしいんだ。仕方なくっていう感じ」

「へぇ、仕方なくするのは大変だな。僕の時は目が覚めたらこの都市にいて私室を割り当てられて管理者に起こされたから、その案内してくれたって人のことは知らないね」

「そうか……」

 あの子はなぜ働いていたんだろう。

 昔ならともかく、今働く必要なんて一つも無いはずなのに……

 もしかして、この世界は僕らが知らないだけで裏では人が働いているのか?

 知らない誰かのはたくと言う行動の上に、僕らの生活は成り立っているのかもしれない。

 よし、今日から自由時間に都市の行ったことがない場所を探検して働いている人を探してみよう。



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