「種が足りねぇ！」

「どうしたんだい、業者から届いたんじゃないのかい？」

「届いたけど、少ない。昔は家で種を取ったりしてたけど今はそれもできないし……」

「昔って何時の話？」

「こっちに来る前の話」

「そりゃあまぁ、世界が違うから……。この世界では子を為すことはできないから。それは人も動物も植物もそうって話さ」

「わかってるんだよ、わかってはいることと、納得できることはまた違う話で……」

「よし、いいこと思いついたで」

「なんだ？」

「種を自分で採りに行けばいいんだよ！」

「どこにさ」

「森へ行くぞ、卵拾いだ。詳しくはしらんが、この世界で種や苗は卵から採れるのだろう？　自分で森へ拾いに行けばいいんだ」

「あー、卵拾いな。卵拾いはなぁ～」

「なんだ、何か知っているのか？　問題でも？」

「いや、こっちに来た時に俺もやったことはあるんだよ。結構広く仕事として募集してるからな」

「それで？」

「なんというか、いくつかの卵をくすねて持って帰ったことがあって、中を見たんだよ。そうしたらさ、植物の種じゃなくて猪の子がでてきたり、ヒヨコが出てきたりしてなぁ。本格的に何が出てくるのか素人じゃわからねぇんだよ。だから、俺たちが今から卵拾いに行っても狙いの種を拾えることはないだろうな……」

「そうなのか……じゃあどうするんだ？」

「そりゃあ、市場まで直接行って階に行くんだよ。種売り業者には今度文句を言いに行ってやるさ」

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