第1552話:ジチャ・トット~幻覚薬~

「ふあ~」

「うわ、どうしたんだい? アホみたいな顔して」

「ん~その声は……だめだぁ、声なんて判らないや……でも状況からして……トットかな?」

 帰ってみると同居人がまるで寝ぼけたかのようにぐにゃぐにゃしていて、焦点もこちらに合っておらず、話しかけた旨は認識しているが詳細は判別できていないという様子だった。

 まぁ何か新しいおもちゃでも見つけて試しているのだろう。

 この様子は少し心配になるが、放っておいても問題はないだろう。

 正気に戻ったら自分から話をしにくるに違いない。


「いやぁさっきは恥ずかしい姿を見せてしまったね」

 どうやら正気に戻ったようだ。

「さっきは何をしていたんだ? かなりヤバい顔になっていたが」

「ああ、幻覚剤だよ」

「幻覚剤? ヤバい薬じゃないか? 使って大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫、成分的に依存性は無いし健康にも一切の影響を残さない。安心安全な薬さ。まぁ、かなり気持ちいいからその気持ちよさ目的に常習しがちなんだが……」

「それを常習性があって危ないって言うんじゃないのか……? ていうか、使ってるの始めて見たけど、なんか詳しくないか?」

「ああ、久しぶりに手に入れたからね。以前最後に使ったのは……そうだ、はまりすぎて寝食忘れて常用してたら衰弱死した時だ。いやぁ、懐かしいなぁ」

「いや、その薬禁止な」

「えぇ、危険性は無いのに!」

 それで死んだ奴がどの口で言っているんだ。


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