第1548話:レイレア~スイカ~

「避けろ!」

 咄嗟に号令が響く。

 上を見れば、見たことがある緑と黒の縞々の玉が転がってくる。

「スイカ!?」

 誰かが叫んだ。そう、あれはスイカだ。

 いや、スイカだろうか。

 あんなに大きなスイカは見たことがない。

「ボケッとしてるな、ひかれるぞ!」

 横から手を引かれて、倒れ込む。その横をスイカはゴロンゴロンと転がっていった。

「スイカ!?」

「よくあることだ、気にするな。避けろと言われたときに避けさえすればな」

「なんでスイカが!? 気にするなと言われても無理ですよ」

「この山はそういう場所なんだ」

「巨大なスイカが転がってくる場所……?」

「いや、まぁ具体的には違うんだが……。ここは登る人がここにあるべきではないと思う物が脅威となって襲ってくるという、そういう坂だ」

「それでスイカが!? え、誰が今この場にスイカがあるべきでないって考えてたんですか!?」

「俺だ。次はだれの番かわからないが、できるだけ安全なものを考えておくことだな……」

「いや、スイカってあんまり危険なイメージなかったですけど、それでも死の危険を感じたんですが……」

 ていうか、この場にふさわしくないものってなんだ?

 この山道にあるべきでないもの、それでいて危険性の低そうなもの……

「うおー! 誰だこの場にぬいぐるみは無いななんてことを考えた奴は! 意思を持って襲ってくる強靭なクマのぬいぐるみだ! 何とか討伐をしろ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る