第1549話:フチ・アエッチ~不可能性不可能~

「無理だよ」

「無理じゃない、行ける。やれる。絶対できる」

「無理だよ~! 絶対無理だって~!」

 考えるまでもなく無理だと思うことをめちゃくちゃいい笑顔でやればできるって背中を押されている。

 絶対に無理なものは無理って話をしているのに、聞いてくれない。

 このままでは私は死ぬ、と言うか殺される。

 背中を押されて見える細断ミキサーにぶち込まれる。

 それだけはだめだ、私はまだ死にたくない。

「そんなに言うなら自分でやってくださいよ!」

「馬鹿野郎! それができれば苦労しないっての。俺にはできないからできるお前に頼んでるんだろうが!」

「私にだってできないからこうやって断ってるんですよ!」

 話が通じない~!

 でもいまやらされそうなこととこの人を説得する方が成功率が高い。

 向こうは生存率0%だが、こっちの説得は10%ぐらいはある。

 しかもこっちを粘っているうちは絶対に死なない。

 お得だ。

 いや、混乱しているな、とりあえず落ち着いて重心を落として耐える。

 安定した状態でならより効果的な説得が可能なはずだ。

「おお、この安定した体幹ならこれに挑戦しても無事帰ってくることができるに違いない! ぜひとも行ってくれ!」

 うわー! 悪化した!

「体幹の良し悪しは重要じゃないしいくら私でも無理なものは無理!」

 何とか生き残るためにこの押し問答(物理)を続けなければいけないようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る