第1484話:ヒサバ・フッツ~占星術~

「占星術師の人がいるのはここですか?」

 ある日、私の元に一人の客人が現れた。

 占星術師を探しているということだが……

「確かに以前は占星術師をしておりましたが、こちらに来てからはもう廃業しております。どこで私のことを知ったのか分かりませんが、お引き取り願えますか?」

「いやいや、君の事情ならわかってるよ、占星術師を辞めた理由もね」

 占星術師を辞めた理由が分かっていながら占星術師を探しているというのはどういうことだろう。

 その理由を聞き出して取り除けるというのであるならば復帰するとでも思ってカマを掛けてきているのかもしれないとも思えるが……

 占星術師がこの世界でできない理由なんて馬鹿でもわかるような話だ。

 それを取り除くことが不可能であることも同様にわかる。

「この世界には星がない、そんな世界で占星術師としての私を求めてくるというのはどういう事情があるというのです?」

 そんな理由はどれだけ考えても思い当らない。

 思い当っていたら私はそれを商売にしているだろう。

「そうですね、占星術師の経験が必要だったのです。星を読む力というのは長いスパンで訪れる自然現象や社会現象を収集し再び訪れた時にそれを読んで知らせること。私が必要としているのはその際に培われているはずの季節の知識、そして人々に伝えることが可能な求心力です!!!」

「なるほど???」

 強く言われたが、今現在占星術が使える必要はなく経験があればいいということだった。

 なるほど、占星術師の素質を流用したいということか……

 それなら話ぐらい聞いてみてもいいかもしれないな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る