第1443話:ヒグ・フレキディオ~入れ替わり~
「あれ、今日はおとなしいじゃん。体調でも悪い?」
「あ、いえ、いや、そんなことはないぜ」
「そうか? どうせなんか変なものでも拾い食いしたんだろ、たいがいにしておかないとまた死ぬぞ」
「お、おう、きをつけるぜぇ」
危ない危ない、疑われてしまった。
あのような粗忽者のふりをするなどと、私のような者ができるものではない。
いかに完璧な私といえどもふとした瞬間ボロを出して疑われてしまっても仕方がないというものだ。
だとしても、今この体に入っているのがこの学園の問題児オウルティク・ファルダではなく、私、ヒグ・フレキディオであるということは絶対にバレてはいけない。
事の起こりは今朝、目が覚めると知らない部屋にいた。
やけに小ぎれいにまとめられている、綺麗な部屋だ。
普段の私の部屋も掃除は行き届いているが、それと比べられるぐらいには綺麗な部屋だ。
なぜこんな場所に? そう疑問を持ちながらも何者かに何かされていないかと棚の上に置いてあった鏡を見る。
そこには見慣れた私の顔ではなく、オウルティク・ファルダのものだった。
いつもよりも少しだけ時間がかかった着替えを終え、幸い顔認証式だった
幸い私はすぐに見つかって、私の権限で使用できる個室を開けさせて中に押し込んで話を聞く。
「君、オウルティク・ファルダだな?」
「そういうお前はヒグ・フレキディオか……どういうわけか入れ替わったってことか」
「そういうことらしい」
私は当然としてオウルティク・ファルダの方も思いの外察しがいい。
知っている彼とは全然イメージが違う、私の顔だからだろうか。
とりあえずとして最低限のパーソナリティ情報の交換と、取り決めを交わして放課後に学園外で相談をするための集合場所だけ決めて別れた。
ぐぬぬ、私がこんなにも彼を模倣するのに苦労をしているのだから彼も私を模倣するのに苦労しているに違いない。
今の時間私がいるはずの場所を覗きに行ってみる。
彼はどの時間でも定まった場所を持たないので自由に行動できるのは楽ではあった。
柱の陰に隠れて覗き込むと、打ち合わせ前の休憩中のようだった。
そこにいたのは私のふりをするオウルティク・ファルダではなく、私であった。
「あいつ、やけに私の振りが上手いな……、後で事情を聞いておく必要がありそうだな……」
部屋のこともあるし、彼の普段のふるまい自体が演技なのではないだろうか。
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