第1442話:皇勇人ⅡⅩⅤ~背は伸びたが~

 かれこれこの世界に来てから5年が経った。

 実際に過ごした時間を地球換算すると10年ぐらい経ったような気もするが暦の上では5年ぐらいだ。

 どういう理屈か体の成長も暦に沿うらしく、だいたい10歳ぐらいの体格まで成長した。

 改めて10歳までの成長を体験してみると10歳の体はかなり大きい。

 確かにこれぐらい動けて力もあれば冒険に出るには不足ないな。

 昔読んだ冒険ものの出立がだいたい10歳ぐらいだったことを思い出して納得する。

 確かにこのぐらいまで育てば冒険にも耐えうるだろう。

 この世界のかなり高性能な武具を使っていたとはいえ、5歳の体でそのまま魔物と戦いにいったのに無理があったのだ。

 最近はスライムが弱い世界由来のスライムは余裕で焼けるようになったし、ちょっと獣系の魔物とも戦えるようになった。

 武器は光線銃とかそういうのを使うようになっちゃったけど、重い剣はまだ振るには力が足りないし、近接で戦うのはまだ怖い。

 5年スライムにビビったり焼いたりを続けながら卵拾いをして背が伸びてもそれはあまりかわらなかったのだ。

「やっぱり最初からそういう前提の世界に生まれているだけで常識が違うよな~とは思うんですよね。

 いままで平和に生きてきて異世界に来たとたん魔物と戦えるメンタルになるのは物語の中だけなんですよ」

 体の成長を実感しながらも心はあんまり変わってないよな~って話をハンター仲間にしたところ

「いや、別に魔物と戦うことが宿命付けられてるような世界に生まれても魔物と戦う恐怖を乗り越えられなかった奴は生き残れねぇだけだぞ」

 と、一蹴されてしまった。

「俺はそうやって死んだ、だから生まれ直してもう一度のチャンスは恐怖を乗り越えて戦ってんだ」と続けられなかったら正論で殴らないでくれよと返していたかもしれない。

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