第1387話:ナキガネ・ハサミ~無くてもいいもの~
「あ、あれは無くてもよくない?」
帰り道に何かを指してそう言っている人を見た。
いったい何を指して無くてもいいなんてことを言ったのか。
気になってその人がいなくなった後にその場所に立って眺めてみる。
そこから見える景色には様々なものかま見え、いったい何を指して無くてもいいなんて言ったのか、まったくわからない。
しかし、彼は何かを指して無くてもよくない? と発言したのは確かな話で、この景色の中には無くてもいいものが混じっているのだ。それも、わざわざ脚を止めて指を指してまで指摘したくなるものが……
しばらく見ていたけれどどれを取っても有用なものばかりで無くてもいいものなんてものはどこにも見当たりはしなかった。
いったい何を指して無くてもいい何て言ったのか……
気になってこのままでは夜も眠れない、なんとしてでもこの景色の中から無くてもいいものを見つけ出さなければ。
そこで突然ひらめいた。もしかしたら私は無意識的に無くてもいいものを視界から除外している可能性もある。
なんたって無くてもいいものだ、それは存在感が薄くても仕方ない。
もしこれが無い方がいいものだったとしたらそれはとても強い存在感を放つものなのだろうが、今見つけようとしているものは無くてもいいものだ。
あっても困ることはないが、無くても困ることの無いようなもの、その程度の意味合いだろう。
しかし、私には景色の中にそのようなものを見つけられない。
それもすべてそれ自身の存在感の無さに起因する現象だったに違いない。
うん、そうに違いない。
帰って寝よ、この時間がなくてもよかったぐらいだったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます