第1348話:フライダ・シッカル~再現空間~
「最近流行りの再現空間って知ってる?」
「噂程度には、記憶からもうない思い出の場所を再現して、感傷に浸るのが目的のリラクゼーション施設だっけ」
「そう、結構この世界に馴染んでいてもやっぱりたまには昔の懐かしい場所に帰りたいって思っちゃうんだよね。フライダは興味ある?」
「まぁ別に私はいいや、思い出といってもあんまりいい思い出ばかりじゃないし」
「ふぅん、そう。また今度興味があったら一緒に行きましょう、思い出の場所に友達を連れて行ったりできるのよ」
「うん、また気が向いたらね」
ああ、彼女の思い出の景色に行ってみるっていうのならいいかもしれない。
私の思い出の景色は……
「ここが再現空間?」
「を生成する前のフラットな部屋ですね」
私は実はブームになる前に一度再現空間へ行ったことがある。
一通りの説明を受けたあと、風景が徐々に記憶にある景色になるという
部屋に案内され、一人風景が変わるのを待った。
「おお、何か絵が出てきた!」
少し待つと壁に絵が浮かんできて、徐々に壁自体が曖昧になって風景らしくなっていくようでならなかった。
「だんだん精度があがっていくのかな?」
ぼやけた水彩画のような風景はいつまでたってもぼやけたままで形にならない。
「あのー、すいませーん」
扉があったあたりの景色に呼び掛けて係員を呼ぶ。
「あれぇおかしいですねぇ、システムに異常はないんですが……あ、もしかしてお客さん、記憶力が悪い……?」
いやいやそんな馬鹿な。
「あそこのこれ、記憶から作られた風景なんですけど何かわかります?」
「ぼやぼやしすぎて何かわからないですね……、たぶん家の前だと思うんですけど」
「これを見て何か判断してほしいっていうよりも、ここにあったものが記憶の中で何になってるかわかりますか?っていう話なんですよ。これは……もしかしたらありとあらゆるものを抽象的に捉えてて記憶の風景に具体的な何かが何もない……?」
「まさかそんな」
「それしか考えられないです」
そう、私ではあの再現空間で謎空間しか生み出せない……、なんだかそれはとても恥ずかしいので、知られたくない……
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