第1323話:ヒッポデ・ガルド~奇怪難解~

「仰ぎ見る、青い空には血が滲み、それが己の身に流れろと夢見」

「意味が分からない」

「なにが? ああ、この詩か。これはそうだな、教養なき低層民の中で生まれた名作で難しいものではないんだが、彼らの世界のことを知らないと全くわからんよな」

「どう解釈すればいい?」

「まず、この詩が生まれた世界では世界が2層になっててね、よくある話だけど、下が貧民街になっているのさ」

「下層から青空は見えないんじゃないか?」

「遮る天井が青く塗られていたのさ」

「なるほど、空が青く塗られた天井で、それに滲む血と言うのは? 上で流れた血がにじんでくる程薄かったのか?」

「いやいや、さすがにそんなことはない。実際に天井に着いていたのはただの汚れさ」

「それが赤かったの?」

「そうさ」

「じゃあその汚れが体に流れていたらっていうのはどういうこと? 無知ゆえに上の人の血だと思って体に流れていたら今頃上の人だっただろうっていう詩?」

「いやいや、もっと悲惨だよ」

「どんなふうに?」

「天井の汚れは上で出た犯罪者を下層に落とす刑をする際にできる掴み跡だよ」

「ひぇ、上で犯罪者になるようなやつの血をなんで欲しがるんだ?」

「無駄に流れた血でも自分に輸血されていれば助かったのにという今際の詩なんだよ」

「ひぇ、なんでそれ名作として語り継がれてるの……」

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