第1307話:イカサ・ガイドット~追い旋風~

「逃げろ逃げろ~!」

「知ってたよな、お前知ってたよなアレがこの時間に来るって。なんでもっと早く言わねぇ!」

 そう怒鳴りながら走る俺たちの後ろを追うようにやってくるのはすべてを砕き食う旋風。

「そりゃあ知ってたよ? そうでもなけりゃああのタイミングで席を立つなんてしなかったさ」

「なんで先に言わねぇ、いやそういう奴だってことは知ってたけどよ、食後のデザートを食い損ねちまったじゃねぇか!!! 楽しみにしてたんだぞ!」

「先に食わねぇお前が悪い」

「いつもはお前もうまい物は後に食う派じゃねーか! どうりで今日に限って先に食うと思ったら」

「口に回すエネルギーがあったら足に回せ、追い付かれるぞ」

「そうだそうだ、走らなけりゃ死んじまう」

 サウララを罵るのに気を取られて気付いたらもうすぐ後ろに来ている。

「お前、わざとゆっくり走ったな……!?」

「さすがに、いつも巻き込んでいたら気付くか。ぎりぎりの環境っていい物だよなぁ」

「この修行狂が……」

 この殺人気象地帯に住むようなやつだ、狂ってないわけがないんだ。

「そんな私に弟子入りしたんだ、お前もそうとう狂ってるよ」

「死ぬために弟子入りしたわけじゃないんだけどな……」

「専属料理番になるなら守ってやるけど、お前の作るご飯は美味しいからね」

「料理は交代制、その方が俺の胃の修行になる」

「そうか、なら逃げきらないとね。そういえば言い忘れてたけど、あれは人の声に反応して移動してるから、しゃべってるとずっと追いかけてくるよ」

「そういうことは先に言ってくれ……!!!」

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