第1302話:ヒラキ・ササメア~インストール~

「お前まだ物理式の携帯端末デバイス使ってるのかよ」

「それ以外に何があるってんだよ」

「最新のやつはこれだ」

 そう言って額を指す。

「デコ?」

「脳にインストールしてるのさ、便利だぞ」

「そんなことできるのか」

「最新の技術ってやつさ、理屈はよくわからんが、考えただけで操作できるし、記憶もばっちり」

「脳の容量を圧迫したりしないのか?」

「最低動作部分だけここに入ってて、残りの部分は全部クラウドでほとんど気にならない。通信の速度はめっちゃ早いから意識した瞬間に動作するし。あとは魔法を意識で発動できるようになるから気分的には魔導士になった感じさ」

「ふぅん、そいつはすごいな」

「お前もインストールするか?」

「それ、いつでも抜けるんだろうな?」

「ああ、いつでも抜けるぜ」

「ならインストールしてみてもいいかな。どうやるんだ?」

「こいつを使う」

 そう言って取り出したのは球体。

「それいつも持ち歩いてるのか?」

「いや、これはデータ体だから。魔法で構成された一時構成物だよ」

「これをどうすればいいんだ?」

「それを自分の手で頭にねじ込む、押し付ければいいから」

「ふむ」

 その球を受け取る。

 やけに軽い、重さが無いみたいだ。

「さあ、どうぞ」

 促されるままに球を額に押し当てる。

 重さはないのに、少しひんやりした感じがある。

 データの温度と言う奴だろうか。

 そのままグイっと頭に押し当てると何の抵抗もなくするりと入り、額を手で打った。

 その瞬間、目に見える世界が一変した。

 いろんなものが細かく情報付けされ、それがオーバーレイされるようになって、それでいて視界の邪魔にならない不思議な感覚。

「ようこそ、こちら側へ」

 精神を拡張する感覚というのは、こうも素晴らしい物なのか。

 これは他の人にも広めてやらなければならないな……。

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