第1275話:テヴィ-ガリツ~電源喪失~

「全電源喪失」

 しくじった。

 給電ケーブルを邪魔だと切断し、内蔵バッテリーが尽きるまでにトドメをさせなかった。

 こうなってしまっては、パワードスーツはただの動けない、身を守る機能すらもまとも働いてくれない鉄の箱だ。


 幸い(と言っていいのか)討伐対象は既に逃げ出しており、動けなくなったところをボッコボコという事態は避けられた。

 しかして動けないという現状に変わりはなく、仕方なく回収を待っているしかないのだ。


 どれぐらい経ったか、いつもならそろそろ回収されてても良いぐらいは経ったんじゃないか?

 首がピクリとも回らないから、正面以外の状態がどうなってるか全くわからない。

 回収班になにかトラブルがあったんじゃないかと不安になる。


 さらに時間が経過し、そういえばケーブルを切断した場所から大分離れてしまっていることに思い至る。

 そのせいで見つけられてないんだろうか。

 いやいや、ビーコンがある。

 場所の把握ができていないなんてことはないはずだ。


 もしかして見捨てられたのかもしれない。

 そんな不安がよぎる。

 思い返してみれば度重なる命令無視、不遜な態度、後進の現れ、見捨てられるに足りる要素は揃ってたように思う。

 そういえば、今も深追いは危険だと言う指示を無視してのケーブル切断をしてここに来てるからな、自業自得か。

「そうか、見捨てられたか……」

 口に出してみるとすんなりと納得がいった。

 助けに来る必要がない、ここで一人死ぬかと目を瞑り眠りに落ちる。


 目を覚ますと見慣れたトラックの荷台ベッドに寝かされていた。

「あ、起きた。遅くなってごめんねー、あの辺目的個体以外にも結構いろいろいてさ、回収向かうの遅くなっちゃった。あんたもあんなところで寝ながら待ってるなんて大物ね」

「あ、ああ。待ちくたびれたからな」

「次からは指示を無視して深追いするのやめてよね」

「気を付ける……」

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