第1274話:フルク・ガルバチ~自分のために~

「君はいつもそうだな、自らを一切顧みない。そんなことではいつか死ぬぞ? いや、そうして君は死んだんだったな」

 人を助けた、いつものように。

 それを見ていた昔からの知り合いが嫌味を飛ばしてくる。

「何が悪いっていうんだ。誰かのために何かを為すことは悪いことじゃないはずだろう」

「誰かのため何かをすることは否定しないさ、そのために身を削ることもね。そういう話じゃあないんだよ」

「じゃあ、どういうことだよ」

 確かに今、俺は空腹の人のために自分の昼飯を与えるようなことをしたが、それはこんなことを言われるようなことじゃないはずだ。



「名乗りもせずに人を助ける、正義の味方のつもりかい?」

「いいだろ、俺に名指しで感謝の気持ちを向けなくてもいいってだけだ」

「ここしばらく僕は君が自分のためになにかをしているのを見たことがない」

「なんだ、そんなことか。俺はいいんだ、別に何も望んだりしていないから」

「何も望まないって、そんなわけがないだろう!」

 昔からこいつはこういう感じだった、


「本当にそういうところだよ君は、なんで僕がこんなことを君に言っているかも考えてほしいものだが……。まぁいいか、今後、自分が何を望んでいるのかもちゃんと考えに入れた行動をするんだぞ」

「別に自分の身を削ることもたまにだし、それを否定しないというなら、善行をしてるだけの俺の何がそんなに心配なんだ」

「身を削るにしても躊躇する素振りを少しでも見せればまだ安心なんだけどね、君は何かをするときに自らが得ることは考えて無さそうだったから」

「別にいいだろ」

「自分で自分の為を考えられない奴は誰も自分の為を考えてくれなくなった時に死ぬんだよ」

「じゃあしばらくは大丈夫だろ……」

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