第1272話:カキタキ・フルダチ~剣の原~

 黒い地面に等間隔に赤い花が咲いている。

 やけに太い茎を持ち、内の一つの花がすでに枯れている。

「いい頃合いかな」

 その柄を掴み腰を入れて一気に引き抜く。

 まるで根菜のように地面から引き抜かれたそれは、鈍く輝く一振りの剣だった。

「うん、なかなかいい感じだね」

 この黒い原に咲く赤い花はすべて剣の花と呼ばれるものだ。

 この黒い原に植えられたこれらはこの土地にしみこんでいる鉄を吸って、剣の根を構成する。

 茎はそのまま柄として使え、花が枯れる頃には双葉は硬質化し鍔として役立つ。

 泥を落とすだけである程度はなまくらの剣として使えるという便利な植物だ。


「お、これもそろそろか」

 先ほどの一振りは簡易的な鞘を作って収め、背中に背負った籠に入れる。

 また見つけた花が落ちた剣の花を引き抜こうとする。

「ん、抜けない……?」

 まさか、これは……

 噂に聞いたことがある。

 剣の花には何万本に一本の割合で特別な剣が育つという。

 始めて見たが、これがそうなのかもしれない。

 しかし、これは引き抜けない。

 どうしようか、これは私では引き抜けない。

 一定を超える膂力を持つ選ばれし者にしかこれを抜くことはできないだろう。

 伝説の剣として抜ける人を募集して、参加費を取ることにしようか……

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