第1261話:イーシェ・パリトル~高速回転巨大トリモチ~
「大変なことが起きている」
「ああ、わかってるよ今すぐ逃げるんだ、どこに逃げよう、どこに逃げてもアレは追いかけてくる気がする、ここまで現実離れした光景だとこれは夢なのでは?という気分になってくる、今すぐ起きないと遅刻する気がする」
「現実逃避するんじゃない。起きてる現象としても光景としても信じがたいし実際夢であればどれだけ楽であろうとこれは実際に起きている。たとえそれが巨大なトリモチが高速で転がって街をくっつけて大きくなっていっていたとしてもだ」
遠くとも言ってられない距離から響いてくる地響き、そちらに目を向けると先ほど折取り込まれた街のシンボルであった塔が転がる衝撃で更に細かく降り砕かれてトリモチに取り込まれていくのが見えた。
「言語化すると本当に信じ難すぎる……」
「あんなもの対処しようとするだけ無駄だ、さっさと遠くに逃げるしか手段はない」
「どこに逃げればいいんだ、街を飲み込んだら街を飲み込んだ相応に大きくなる。そうしたら本当に逃げ場なんて無くなってしまう」
「生きる意志を失えば本当に為す術がない、とりあえずあがけば何とかなる」
そんな言い合いをしていて気付けばいつの間にやらトリモチが転がってきていた。
「あ、」「逃げ遅れた……!」
もうなんとかなれと、逆方向に走ってみるのも時すでに遅し、トリモチに食われた。
「起きろ」
「はっ、夢か……トリモチに街ごと捕われる夢」
「夢じゃねぇよ、絶賛絡み取られ中だよ」
「夢じゃなかったのか……、なんで生きてるんだこれ」
足はねばねばに捕らわれて動かない、どうしようもないが何とかまだ生きていた。
「上手いこと空間があるところに突っ込んだらしい、何とかなる希望がでてきたな」
「いやどうにもならんでしょここからは」
逆転はここからだみたいな顔をされても無理なものは無理だ。
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